賃借権の取得時効と法定更新 放置することで権利や義務に

問題やトラブルの放置は厳禁

 

「自主管理するための基礎知識」 項目

1.「敷金はあくまでも預り金」

2.「問題やトラブルの放置は厳禁」

3.「大家は大家以上の立場になってはならない」

4.「掃除と修繕は基本中の基本」

5.「物件へのこまめな手入れは必須」

6.「抜きんでた利点などかえって邪魔になる」

 

wrote. サンハイツ吉田 管理者

行政書士明和事務所

行政書士・宅地建物取引士

吉田 重信

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実は権利義務の発生は契約によるものだけとは限らない。

 

そういったお互いの明確な合意がなかったとしても、
長く続いた事実状態が法的な権利として認められるような事例もある。

 

これは借地借家関係では特に顕著だね。

後にも詳しく解説するけれど、借りている権利は所有権とは別に保護されるものだから、
賃借関係で長く続いたりした事実関係は法益として認められやすい。

 

これは一般の不動産関係においても幅広く認められている考え方でもある。

 

例えば、時効制度なんかがそうだ。

不動産においては取得時効等の時効制度が導入されていて、
ここにおいても長い期間に渡って続いた実態は法的に保護するに値すると考えられている。(民法162条)

 

 

民法162条(所有権の取得時効)

二十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その所有権を取得する。

2 十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その占有の開始の時に、善意であり、かつ、過失がなかったときは、その所有権を取得する。

民法163条(所有権以外の財産権の取得時効)

所有権以外の財産権を、自己のためにする意思をもって、平穏に、かつ、公然と行使する者は、前条の区別に従い二十年又は十年を経過した後、その権利を取得する。

 

 

ちなみに取得時効は所有権にまつわる話だから賃貸に関係ないのではと思われがちだが、
実は取得時効の制度自体は賃貸に流用されることを否定はしていない。(民法163条)

判例においても取得時効を賃借権に適用した事例は複数あるから、
一概に無関係と切り飛ばしていい話ではないんだ。

 

まあ、一般の賃貸物件でこれが問題になる事態はあまり考えられないから、
そんなに神経質になるようなことではないけれど。

しかし、その他の面では一般の賃貸契約においても、
事実を了知した上で長い期間放置した事柄が法的に保護されるような事例もある。

 

したがって、入居時に契約を交わしたからといって、
入居後に起こった状況変化や申し入れ等を放置したりすることはおすすめしない。

 

最も注意すべきなのは契約違反行為で、
これに関しては事実が発覚した際にはその都度、通知してゆく必要があるだろう。

 

これは、なにも言わない=了承済みと解釈されかねないからだ。

後々になって本当に出るところに出なければならないようなトラブルになった際、
その放置の事実は大家にとって不利に作用してしまう可能性が高い。

 

法律用語的には「遅滞なく異議を申し立てなければ・・・」みたいな感じになるんだけれど、
貸主が放置した事実関係は借主に有利な解釈をされがちな傾向にあるからね。

 

普通借家契約の更新等においても大家が特段の合意や意思表示をしなかった場合は、
前の契約条件をそのまま引き継いだものとして扱うとされている。(借地借家法26条)

その気がないのであれば明確に異議を申し立てておかないと、
更新が前提とされている賃貸契約では借りている権利が優先されてしまうということだ。

 

 

借地借家法26条(建物賃貸借契約の更新等)

建物の賃貸借について期間の定めがある場合において、当事者が期間の満了の一年前から六月前までの間に相手方に対して更新をしない旨の通知又は条件を変更しなければ更新をしない旨の通知をしなかったときは、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなす。

ただし、その期間は、定めがないものとする。

2 前項の通知をした場合であっても、建物の賃貸借の期間が満了した後建物の賃借人が使用を継続する場合において、建物の賃貸人が遅滞なく異議を述べなかったときも、同項と同様とする。

3 建物の転貸借がされている場合においては、建物の転借人がする建物の使用の継続を建物の賃借人がする建物の使用の継続とみなして、建物の賃借人と賃貸人との間について前項の規定を適用する。

 

 

まあ、法的な話はさておくとして、
やっぱり長い間なにも言わない状態で放置するのはトラブルの元だよ。

借主からしても、今までなにも言わなかったじゃんってなるのが当たり前だからね。

 

仮に契約違反等の重大なものではなくとも、
造作物の放置や管理不備については、把握しているのであれば言わないわけにはいかない。

 

造作物の管理は長年放置していたりすると、
借主側から「そもそもそちらの管理物では?」とか言われたりする場合もあるからな。

 

 

つまり、これは口うるさい云々では済まない話なんだよ。

 

大家というのは、元々そういう立場なわけ。

 

 

どうしてもカドが立つことを懸念するようであれば、
まずは「お願い」といった形からアプローチしてみるのもいいだろう。

 

 

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